石臼の雑記

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デュエルマスターズのデザインテーマの歴史を考察したい

カードゲームをプレイしたことのある人ならもはや当たり前のような話だが、カードゲームというのはインフレが必然のゲームである。

もし特定のデッキが一年も二年もトップメタとして頂点に君臨し続ければプレイヤーは対戦に新鮮味を失うし、いつデュエルしても相手はいつも同じデッキなんてことになれば興味そのものがなくなってしまうこともあるだろう。

環境を変えて新しいデッキを作らせようとすることは、プレイヤーを定着させるにも、新規を獲得するにも、新カードの売り上げを良くするためにも避けては通れない開発の課題である。

 

しかしインフレしなければならないという点と同時に、急速なインフレ自体は避けなければならないことにも開発は苦心していることだろう。もし新しいカードが出るたびに凄まじいインフレが起これば、それは過去のカードが使いものにならなくなるのも早いということになってしまう。せっかく買ったカードが少し遊んだら弱いカードとされるのは、遊ぶ側としては購買意欲どころか遊んでみようという意欲すら失いかねないため、売る側としてはインフレの速度にも気を使わねばならないのだ。

 

前置きは以上として、今回はデュエルマスターズの過去数年のインフレの歴史、カードデザインの歴史について考えたことをまとめていきたい。「強力なカードを使わせる。ただし使うことに条件を設ける」という手法でさまざまなカード、そしてデッキを作ってきたデュエマの変遷を、今のデュエマを知らない人にもなんとなくわかるように書いていきたいと思う。

 

ここで注意点なのだが、今回は別に「過去のトップメタにはこんなヤバいデッキがいて、当時はこんな動きをして環境で暴れまわった」と紹介するわけではない。

例としてプレミアム殿堂(禁止カード)となった《邪神M・ロマノフ(以下Mロマ)》で説明していこう。

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このカードは2010年に発売された構築済みデッキに収録されたカードで、少なくとも当時の環境においては「ぶっ壊れ」として扱われ2012年に禁止カードに指定されたカードである。

このカードが登場した神化編は「ゴッド」と「進化クリーチャー」がテーマの年だった。ではMロマが登場した神化編はインフレの年か?と問うならば答えは「否」だろう。Mロマはゴッドでありながら単体で戦える、かつその性能が並のクリーチャーよりも頭抜けていた所謂「バグ」みたいなもので、このカードが産みだされた背景にあるゴッドの公式プッシュ自体は環境を壊すほど凶悪なものではない。

当記事で神化編について述べるとするならば、「ゴッドクリーチャーや進化クリーチャーのメディアプッシュはなぜ行われたのか?環境を変えることに成功したのか?」という点に注目するだけで、Mロマのような一部極端なバグについては言及しない、ということである。

 

それでは、過去幾年のカードがどのように作られてきたかを以下妄想してみたい。

 

■覚醒編~エピソード1期(2010年6月~2012年3月)

この2年間で作られたカードは、後のカードデザインに大きな影響を与えた。いわばカードデザインのターニングポイント的な時期である。というのも、この年のテーマである「サイキック・クリーチャー」が強力すぎたために、クリーチャーのスペックを向上させざるをえなかったのである。

 

ではサイキック・クリーチャーとはなんぞや、ということだが、

 ・通常の40枚のデッキとは別の領域(超次元)に用意しておくクリーチャー。つまりはエクストラデッキからクリーチャーを出せるギミック

 ・サイキッククリーチャーは(当時は)専用の呪文を使うことでのみバトルゾーンに出せる

というシステムである。

 

このサイキッククリーチャーがデッキ構築にどんな影響を与えたかというと、誇張気味にいうとするならば「クリーチャーが使われなくなった」のである。

なにせ呪文から出すサイキッククリーチャーは適宜選択できるために、状況に応じてブロッカーを出したり除去をしたりフィニッシャーを出せたりと汎用性が段違いなのである。プレイヤーは勝ち筋をサイキッククリーチャーに任せ、残りのスペースには呪文サポート系のカードを少数詰むという構築にした。

当時の流行りのデッキが不滅オロチ - DuelMasters Wiki(デュエルマスターズ ウィキ) - アットウィキドロマー超次元 - DuelMasters Wiki(デュエルマスターズ ウィキ) - アットウィキといった「デッキのほとんどが呪文で、クリーチャーは数枚のみ」という構築が多かったことからも超次元の影響力を伺えよう。

 

一応開発もこのクリーチャーの価値が暴落している現状はよくないと思ったのか、メタカードを産みだした。それが「呪文がデッキに多ければ多いほど致命的になる」という効果を持ったサイキック・クリーチャー、《ヴォルグ・サンダー》の登場である。

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呪文だけのデッキではヴォルグを出されたときに即死しかねない風潮が生まれた。が、風潮があるのみで呪文に偏った構築にはなにも影響はなかった。

なにせヴォルグを出すことにも超次元を使うのである。ヴォルグを使われることを恐れてサイキックより弱い普通のクリーチャーを使うくらいなら、自分がヴォルグを使って相手を先に倒そうとなるのは自然な流れだった。

しかも性質の悪いことに、ヴォルグを連打するあるいは無限ループさせるデッキが流行ったことにより、クリーチャーを大量に搭載したデッキでも問答無用で山札切れが発生したのである。クリーチャーでシールドを殴り殴られのシーソーゲームになるどころか、先に山札を破壊したほうの勝ちという歪んだゲームになりかけていた。

 

まとめると、覚醒編~エピソード1期の2年間で起こったこととしては以下の2点である

 (1)デッキから普通のクリーチャーが消えてしまった

 (2)山札破壊デッキが流行りシールドを割らずに勝つデッキが生まれた

この2年間を経て、開発は「サイキックよりも強力なクリーチャーをデザインする」ことが急務となったのだ。

 

■エピソード2~エピソード3期(2012年6月~2014年2月)

ここでデュエマが取り組んだことが、「コスト8~12帯の重量級クリーチャーのスペック向上」である。

悪名高い《勝利宣言 鬼丸「覇」》や《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》といったコスト10前後のクリーチャーは、重いかわりに出せさえすれば勝利一歩手前に近づくほどのアドバンテージを稼ぐことができた

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↑ 《鬼丸「覇」》の連続ターンの恐怖はデッキにコストの重いカードを詰む意味をもたらし、相対的にコスト5前後の超次元呪文は価値が下がった

コスト踏み倒しやコスト軽減、あるいは過剰なマナ加速からそれらのクリーチャーを早出しするデッキの流行は、「既存のカードでちまちまアドバンテージを稼いでも、重量級を出されたら一発で逆転されかねない」という意識を生み、結果としてサイキックに完全依存した構築は減少、超次元はサポート的な立ち位置となる。

こうした大型クリーチャーを展開し圧倒するゲーム展開はインフレと非難されたこともあったが、サイキックによる山札破壊特化・呪文特化な環境を変えることには確実に成功していた。

 

なお、上記の取り組みはエピソード2期の1年間のみの話である。

エピソード3期にもゴッド・ノヴァとエグザイルクリーチャーという固有のテーマはあったが、それらは後に公式が弱かったと認めるほど控えめな性能(エピソード2でのインフレの反省もある)で、エピソード2で形成された重量級クリーチャーを勝ち筋とする構築を淘汰するほど環境を変えていないので2年まとめて紹介した。

 

エピソード2~エピソード3期の2年間で起こったこととしては以下の2点である。

 (1)クリーチャーが主役のデュエマには戻ったものの、重量級が主役のため環境はコントロールデッキが強い低速環境となった(メインターゲットの小中学生にはビートダウンのがとっつきやすいため、公式は可能ならそちらを推奨したい)

 (2)エピソード2期の重量級クリーチャーは「これらが召喚されるまでにデュエルに勝利ないしは相当に有利な盤面にしない限り負けかねない」という、ゲームスピードの一つの指標となった。

補足として言っておくと、これらエピソード2で登場した強力な大型クリーチャーたちは、現在までの数年間で使えない過去のものになったということではない。彼らは効果自体は未だ十二分に活躍しうるものである。
しかし彼らがいつまでも君臨し続ける環境ではデッキから多様性が消えてしまうため、「エピソード2期のクリーチャーを1つのボーダーとして、それら君臨する前にデュエルを決着できるほどに強力なより軽いクリーチャーを作ってみよう」という方向に開発がシフトしたというわけである。(なお、この時点でサイキッククリーチャーが軸のデッキはすでに姿を消している)

 

■ドラゴンサーガ期(2014年5月~2015年3月)

ビートダウン主体のより速い環境の構築、そして重量級による制圧が主流の環境に新たなデッキタイプを生みだすための取り組みが、「単色デッキの推奨・強化」である。

その要となるのが「マナ武装」という新規能力である。例えば「マナ武装5」とあれば、特定の文明のカードがマナに5枚あれば能力発動、といった具合である。おわかりだろうか。つまりこれは「デッキ構築を単色寄りに縛るかわりに、中コスト帯のクリーチャーに強力な効果をつけられる」という緩やかなインフレを可能とする能力なのだ。

 

事実、ドラゴンサーガ期に登場した多くの花形クリーチャーはいずれもコスト6~8程度の中コスト帯で、それらはいずれも過去の中型クリーチャーより遥かにデュエルを勝利に近づける強力な効果を持っていた。単純な効果だけなら凄まじいインフレだったかもしれないが、決してどんなデッキにもとりあえず突っ込むとはできないように制約がある。この「強力な効果のわりにコストが低いが、真価を発揮するには構築を縛らねばならない」というやり方が以降のデュエマのカードパワー上昇のやり方となっていく。

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↑ 赤単かつドラゴン寄りの構築なら単体でシールドを全ブレイクしてダイレクトアタックが可能という破格の攻撃性能

ドラゴンサーガ期の1年間を通した単色デッキの強化により、準赤単や黒単、白単といったそれまで全く見なかった新たなデッキタイプが多数登場した。デッキカラーを大きく縛るという制約のもと真価を発揮するドラゴンサーガ期の中型クリーチャーたちは、かつての重量級が召喚される前に勝利をもたらすほどの爆発力があることを結果で示したのである。

 

ドラゴンサーガ期の総括としては以下の2点

 (1)環境の変化と中コスト帯のクリーチャー強化(=ビートダウンの強化)に成功した

 (2)マナ武装等の「特定のデッキタイプでのみシナジーを発揮するような効果」が多くなったことによるテキストの複雑化がおきた

封入率の問題による主要カードの高額化、テキストの複雑化による新規のとっつきにくさといった課題もドラゴンサーガには存在し。ドラゴンが主役の1年であったにも関わらず売り上げが好転しないという事態にもなった。
よって以後のカードにおいては、「新規・初心者にもわかりやすい効果でありつつ、それまでのインフレにもついていける(新規が過去の高額カードなしでも戦えるような)カード」を作ることが求められるようになっていった。

 

■革命編~革命ファイナル編(2015年6月~2016年12月)

わかりやすく(直感的で)強力な効果、ということで登場するのが革命編での「侵略」、革命ファイナルでの「革命チェンジ」である。これらはどういう効果かというと「攻撃時限定で自身をコスト踏み倒しできる効果」だ。

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↑ 実質0マナ、パワー12000、Tブレイカー、除去つきというまさしく新時代のビートダウンの申し子といったスペック。効果は単純で直感的だが強力

もしただ踏み倒し可能というだけならコントロールデッキにも悪用されかねないが、この能力は攻撃時にしか使えない。デュエルマスターズにおいて攻撃は敵に手札を与えトリガーを使われる恐れのある利敵行為なので、要するに侵略と革命チェンジは「敵を攻撃するなら(ビートダウン環境にしてくれるなら)コスト踏み倒ししていいよ」というデザインなのである。

 

この2シーズンは環境の高速化をもたらし、5ターン目ごろにはデュエルが決着しかねない(シールドを割りきられているか、挽回が困難なほどに制圧されている)環境となっていた。サイキッククリーチャーは重さのかわりに莫大なアドバンテージを生む大型クリーチャーを誕生させ、それ以降はその大型クリーチャーより劣るものの局所的にそれに勝るとも劣らない尖った武器をもつ中型クリーチャーを誕生させた。2010年からスタートしたインフレと環境変化の連続は、早期に0マナTブレイカーが登場するまでにクリーチャーを進化させたのである。

 

革命~革命ファイナル期の特徴としては以下
 (1)早期に大型打点が踏み倒される超高速環境になった
 (2)侵略持ち・革命チェンジ持ちクリーチャーにより、ドラゴンであること・コマンドであることがクリーチャーにとってより重要となった
この2年間のカード自体は好評かつ売り上げも非常に好調という結果となったものの、「インフレの極致と称されるほどに高速化した環境を今後どうするか」「ドラゴンとコマンドといったそれまでのカード資産が強さに繋がる現状で、より新規プレイヤーの獲得にはどうすべきか」といったことが考えられた。

 

■新章デュエルマスターズ~双極偏(2017年3月~現在)
売り上げとインフレが盛り上がるなかでデュエマが取り組んだのが「原点回帰」と称する流れである。クリエイターズレターで「原点回避」に盛大に間違えたのは内緒だ

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なんとこの年からは、「ドラゴンもコマンドも姿を消し、完全新規種族による今からでも始められるデュエルマスターズ」というコンセプトのもとカードが作られていった(なお1年後の現在ではドラゴンが少しずつ復活している)。過去のデッキを強化するような新規カードがほとんど存在しないが、新種族はいずれも新規カードだけで十分にデッキとして成立してそこそこ戦える程度の性能は持っている、といった趣である。「どんなデッキでも採用できるような汎用性はないが、シナジーする種族デッキなら環境にも渡り合える尖った性能を持ったカード群」といったところだろうか。

 

各文明のできることはバラバラだが、それぞれ共通して見られる特徴は「フィニッシャーとなる中型クリーチャーが真価を発揮するには同属の小型クリーチャーが展開されている必要がある」点だ。それらは高速環境に間に合うように各々がコスト軽減あるいは踏み倒しの方法を自前で持っているが、その条件がシナジーする小型クリーチャーの展開なのである。

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↑ 無色ビートダウンデッキであるジョーカーズでは2マナで全体をスピードアタッカーにできるWブレイカーという超性能だが、そのためには小型クリーチャーを並べる必要がある

ドラゴンサーガ期の中型クリーチャーがデッキカラーを単色に縛らなけらばならなかったのと同様に、新章デュエルマスターズの切り札となるクリーチャーは低コストクリーチャーをデッキに相当数採用することが求められる。

通常デッキの初動を小型クリーチャーに任せることは除去のリスクや後半腐りやすい性質から避けられがちだが、新章デュエルマスターズのフィニッシャーにはそのリスクを踏まえてなお余りある性能を持つものが多い。ドラゴンにもコマンド(過去の有力カード)に依存しない強力なデッキとして、新規の獲得に貢献している。

 

新章デュエルマスターズと双極偏は地続きのテーマかつ現在も継続している内容ということで、今後どうなるかはまだわからない。将来性は十二分にあるだろう。

 

■最後に

というわけで割と少し前あたりまでのデュエマのデザインの歴史を自分なりにまとめてみたが如何だっただろうか。読み物として面白いかは怪しいが、カードが少しずつ強くなっていった様子が伝われば幸いである。

インフレの結果だけ知ると恐ろしく思うかもしれないが、それでも環境には多種多様なデッキのいるバランスのいい時代だし、「昔やってたわー」って人が今のカードの豪快な動きに感動するのもアリじゃないかと。結論だけ言うと、みんなもデュエマしよう。